意識のモデル(生成モデル)によるAIの深化

1. 「生成モデル」とは

 Mumford[1]や川人ら[2]によって提案された「生成モデル」は、低次の入力情報から高次の推定結果を得る「ボトムアップ処理」と呼ばれる仕組みに加え、その逆の、高次から低次を生成する仕組みである「トップダウン処理」を備えています。トップダウン処理は、言わば外界の対象を仮想現実としてシミュレートするものであり、それにより対象への理解や知識がモデルに織り込まれることで、推定の精度が向上すると言われています。ただし、この意味での生成モデルは研究段階にあり(田嶋と渡辺[3])、実用化にはほとんど至っていません。

2. 「生成モデル」を実装した次世代型AI

 当社の次世代型AIはこの「生成モデル」に対して、独自の技術によりトップダウン処理の仕組みを高いレベルで実装しています。一例として医療画像診断をあげるなら、疾患の生体機構や、MRI・CTなどの測定方式ごとの病変を捉える物理的な機構が織り込まれることになります。これらは現状、熟練した医師が医療診断画像の読み解きにおいて頭の中で補っていることですが、当社のAIでは、人の認知能力を超える精緻さで盛り込むことにより、医師の診断補助等に大きく貢献することが期待されます。

3. 事業展開の状況および展望

 当社AIの利用が期待される領域は、上記の特長により、医療・ヘルスケアをはじめ、スマートシティ、自動運転、宇宙・航空など、高度な専門性が必要とされ、かつ市場の成長が著しい分野です。既に当社では富士通株式会社様、名古屋大学様などと提携を行なっています。

[1] Mumford, David. “On the computational architecture of the neocortex.” Biological cybernetics 66.3 (1992): 241-251.

[2] Kawato, Mitsuo, Hideki Hayakawa, and Toshio Inui. “A forward-inverse optics model of reciprocal connections between visual cortical areas.” Network: Computation in Neural Systems 4.4 (1993): 415-422.

[3] Tajima, S. and M. Watanabe. “Acquisition of nonlinear forward optics in generative models: two-stage ‘downside-up’ learning for occluded vision.” Neural Networks 24(2) (2011): 148-158.